ギラン・バレー症候群
Guillian-Barre syndrome:GBS。(感染性多発神経炎infective polyneuritis 、
急性炎症性多発性ニューロパシー acute inflammatory polyneuropathy、
急性免疫性多発神経炎 acute immune-mediated polyneuritis(AIMP))。
フランスのギラン・バレー・ストールによつて報告された予後良好な急性多発性神経根炎です。
上気道感染(種々の感染症)などに続いて、無症状期を経てから急性に発症する
四肢力低下と腱反射消失・低下を主徴候とする自己免疫性末梢神経疾患で、
4週間以内に症状が完成し、以後徐々に軽快するという経過が一般的です。
<Bickerstaff 脳幹脳炎 : BBE>通常、GBSは意識は保たれるため、意識障害を呈した場合には
Bickerstaff 脳幹脳炎(Bickerstaff's brainstem encephalitis:BBE)とされて、
GBSとのオーバーラップと捉えるほうが病状を想起し易いとされている。
昏睡を呈したGBS」と報告されて症例は、病初期に眼筋麻痺や失調性歩行を呈している
ことが多く、GBS/BBEと診断すべきとしています。
一方Fisherは急性発症の外眼筋麻痺と運動失調、腱反射消失を主徴候とし、単相性の経過をとる
3例を報告し、末梢神経障害を主体とするGBSの亜型と考え、Fisher 症候群(FS)と
呼称され1つの疾患単位と認知されていった。
Bickerstaffは"brain stem encephalitis"と題して報告し、感染症の後、急性に発症する外眼筋麻痺と
小脳運動失調に加えて傾眠傾向を呈したが、機転は良好で、主病巣は脳幹で、経過中に大脳へ
の進展や多発末梢神経障害を伴うとし、上気道炎が先行し運動神経徴候が見られることから、
GBSと類似のアレルギー機序を考えた。
1982年Bickerstaffのグループは、FSとGBSとの異同をを論じ、感染を契機に発症し、脳幹から
小脳に病巣を有するアレルギー機序の関与した症候群であると推定したが、BBEとFSは1つ
の症候群として包括し、末梢神経障害を主体とするGBSとは別の疾患であると初めの
主張を翻しています。
BBSとFSとの異同が議論されているが、BBSに末梢神経病変の徴候(四肢麻痺や呼吸筋麻痺、
手袋・靴下型の異常感覚)を伴った例や、GBSに高度な中枢神経障害(閉じ込め症候群や脳幹死
の病像)を伴った例が報告されていったが、こうした例はBBE/GBSと診断すべきであるとしています。
BBEの多くは前駆症状を有し、病因は単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、
風疹ウイルス、サルモネラ typhi、EB ウイルスサイトメガロウイルスマイコプラズマ肺炎菌、
Haemophilus influenzae、カンピロバクターが検出されているので、GBSやFSと類似した
自己免疫疾患が推測されていた。
BBE患者血清中にはIgG抗GQ1b抗体を検出しBBEの一部はFSと同じ自己抗体を有し、
さらに、眼筋運動障害を伴うGBSでもIgG抗GQ1b抗体上昇が確かめられ、
BBS、FS、GBSの三者で共通した免疫異常が存在することが示された。
BBEは、中枢神経障害を伴うFSの重症型として捉えられるかもしれないとしています。
臨床像は、BBEとされた62例について以下にまとめた。男女比は3対2で、発症年齢の中央値は
39才であった。92%に先行感染症状を認め、上気道炎が多かった。初発症状は複視(52%)
と歩行障害(35%)の頻度が高く、四肢の異常感覚(19%)、意識混濁(13%)、四肢筋力低下
(11%)と続いた。経過中の神経徴候として、意識障害(74%)と四肢筋力低下(60%)であった。
顔面神経麻痺が45%、内眼筋麻痺と球麻痺が34%でみられた。腱反射は低下・消失が58%、
亢進が34%であった。バビンスキー反射が40%で陽性であった。脳MRIでは、30%の例で
脳幹や視床、小脳、大脳皮質に異常信号が描出され、脳波では、73%に徐波がみられた。
発症から4週間までの脳脊髄液所見では、細胞数増多が37%、蛋白上昇が59%、
蛋白細胞解離(蛋白と細胞の増加が一致しない)は35%であった。蛋白は経時的な採取
によって上昇した。IgG抗GQ1b抗体は66%で陽性であった。
この62例の治療は副腎皮質ステロイドホルモン薬や血漿浄化療法、免疫グロブリン
大量静注(IVIG)による治療が89%で試みられた。
6ヵ月後の機転では、66% が後遺症なく軽快したが、
ほかは感覚障害や筋力低下、外眼筋麻痺、運動失調を残した。3例が死亡した。
IVIG療法が主な治療ですが、詳しい治療方法は省略します。
診断と鑑別疾患は、暫定的な診断基準を以下に表にしている。急に発症・進行し、4週以内に極期に
達する比較的左右対称性の両側眼筋麻痺と運動失調加えて傾眠状態を含めて意識障害を認め
た例は、FSと区別してBBEと診断する。さらに弛緩性四肢麻痺を呈した例は、BBE/GBSと捉える。
急速に進行する意識障害で来院した場合には、家族からも病初期に複視の訴えや歩行時のふらつき
が無かったかを詳しく聴取し、BBSを鑑別疾患にあげて診察する。先行する感染症状の有無を問い
直すことが、診断のポイントです。BBSでは発症早期の画像や一般検査、脳脊髄検査に特異的な
所見を認めないことも多く、急性期の診断に苦慮することも多い。この疾患を念頭に置かないと、
脳血管障害やヘルペス脳炎などと誤診されます。腱反射は亢進する例と低下する例もある事に
留意する。IgG抗GQ1b抗体の測定も補助診断として有用です。鑑別疾患の中で、容易に治療出
来るウェルニッケ脳症を見落とさないようにする。直接感染による脳幹型単純ヘルペス脳炎の鑑
別は重要です。発熱や頭痛、嘔気、意識障害、眩暈、構音障害、嚥下障害などを初発症状とし、ほと
んどすべての脳神経障害を呈しうる。中でも眼振や顔面神経麻痺、運動失調、四肢麻痺、口蓋ミオクロ
ーヌス、失調性呼吸などの頻度が高い一方、BBEで特徴的な眼振運動制限を欠く例が多く鑑別
になりうる。さらに脳脊髄液のPCRによる単純ヘルペスウイルスDNA同定により診断します。
BBEの診断基準
診断に必要な
臨床症状








1.発症から4週以内に極期に達する眼筋麻痺と運動失調
 ・眼筋麻痺 : 外眼筋麻痺や内眼筋麻痺のどちらか一方のみのことも、
   全外眼筋麻痺のこともあるが、軽症では外眼筋麻痺のみでよい。
   下方注視麻痺を欠くこともある。
    通常、比較的左右対称性であるが稀に片眼のこともある。
 ・運動失調:小脳性運動失調の事が多いが稀に深部感覚性運動失調を伴う事もある
   肢節運動失調に比し体幹失調が優位のことが多い。
   継ぎ足歩行や片脚立ちのみが不安定なだけの軽症例もある。
   通常、肢節運動失調は比較的左右対称である。
2.意識障害 : 刺激で容易に覚醒する傾眠状態から昏睡に至るまで、さまざまです
診断の参考と
なる
臨床所見
(重要な順に)






1.腱反射亢進:
 ・腱反射が亢進していた場合には診断し易いが低下・消失する事も多いことに留意する
 ・バビンスキー反射や半身の感覚障害などの長経路徴候をみることもある
 ・通常、錐体路徴候は左右対称です
2.前駆症状 : 頭痛や上気道炎、胃腸炎などの先行感染症状がある
3.外眼筋麻痺以外の脳症状 :顔面神経麻痺、球麻痺が多くみられ、両側性のことが多い
4.筋力低下 : 比較的左右対称性、両側弛緩性四肢麻痺を伴った場合には、Guillain-
  Barre症候群とのオーバーラップとして捉える
5.大脳半球症状 : まれに痙攣精神症状などをみることがある
6.錐体外路徴候 : まれに固縮や振戦をみることがある
診断の参考と
なる
検査所見



1.血清IgG抗GQ1b抗体陽性 : 陰性例も存在することに留意する
2.髄液細胞数増多あるいは蛋白細胞解離 : 蛋白は上昇は発症1週間以内でしか見られ 
 ないが、第2週以降では8割近くで観察される
3.電気生理学的所見 : 脳波では徐波をみることがある
聴性脳幹反応、瞬目反射、体性感覚誘発電位より中枢神経障害を示唆する所見がある
4.頭部MRI画像所見 : 脳幹部から視床の範囲に異常信号域として描出されることもある
鑑別疾患

脳血管障害、ボツリヌス中毒ウェルニッケ脳症破傷風 クロイツフェルド ヤコブ病
ウイルス性脳幹脳炎(とくに脳幹型ヘルペス脳炎)、重症筋無力症、急性散在性脳脊髄炎
多発性硬化症、神経ベーチェット症候群、脳幹部腫瘍下垂体、脳卒中、血管炎、リンパ

脳炎・脳脊髄炎クロイツフェルド ヤコブ病
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