社会不安障害(社交不安症)
いわゆる「上がり性」もこの病気なのですからこの項を是非読んで下さい。
この疾患の潜在患者は7人に1人とも言われています。
社会不安症social anxiety disorder SAD は社交不安症、社会恐怖social phobia とも言い、
頻度の高い不安障害であるにもかかわらず、一般の人だけでなく、
専門家からも殆ど注目されなかった疾患です。
<症状、発病時期と経過>
1) 特徴的症状は、大勢の前で話をする時や権威のある人と会う時は誰でも緊張するものですが、
職場の少人数での会議や朝礼などで司会、挨拶、発言をする時にも、
過度の不安緊張症状が出現し、1ヶ月以上も前から病んでは何とか避けようとし、
自己嫌悪に陥る状態が長年にわたり続いているというような場合をいう(*表1)。
この様に恐怖症状の出現が生活の様々な場面にわたる例を@全般型、
人前での音楽演奏など特定の場面でのパフォーマンスに限られる例をA非全般型と呼ぶ。
社会不安障害に対しては、@認知行動療法(CBT)と、
A選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI*1)を中心とした薬物療法です。
SSRI による積極的な薬物療法の対象は主に全般型の症例です。
2)発病時期は、10〜17才頃の思春期、特に中学生くらいに発病する場合が多いが、学齢期前や
成人になってからの発症もあります。自然寛解しにくく、人前で何かする機会が増える中高年
になって症状が悪化し、困って受診するケースも多い。家族や周囲が気付くことは少なく、
本人も単なる性格の問題と考えて性格改造を試みたり、話し方教室、催眠(さいみん)療法、
カウンセリングなどを試みたりしても改善せず、二次的にアルコール依存鬱病、他の
不安障害を合併するケースが多い。単なる内気(shyness)とは異なり、実際は患者の半数以上
の病前性格が内気ではないことや、治療の成功により性格傾向が変わることも示されている。
従来知られている対人恐怖では、自分の赤面や視線、体臭などが相手に不快感を与えている
と悩む例が多いが、これら過度の対人緊張を示す緊張型の対人恐怖は、ほぼ社会不安障害
に含まれます(表2)。
*1)SSRI 選択的セロトニン再取り込み阻害薬 : フルボキサミンが良く使用されています。
以下に説明があります。
<推定されるSSRI(*1)の作用メカニズム>社会不安障害の成因は不明ですが、
何らかの遺伝的素因、幼児期の行動抑制と呼ばれる行動特性などの関与のほか、
生物学的な基盤としての中枢セロトニン系とドパミン系の機能異常、
扁桃体を中心とした神経ネットワークの機能異常が推定されている。
動物のすくみ行動など恐怖反応の出現には脳の扁桃体の過活動が関与しているが、
SSRI は脳内セロトニンの利用率を高めるとともにセロトニン受容体(特に5-HT2C)の感受性を
変化させて、こうした過活動を抑制し抗不安作用を発揮すると考えられている。
<社会不安障害の治療
@恐怖状況への階段的暴露による脱感作を基本とする行動療法と、               、
A恐怖状況の過大評価などの誤った認知を是正する認知療法を合わせた認知行動療法(CBT)
BSSRI を中心とした薬物療法、                                     、
などが、社会不安障害治療に有効性が示され、それぞれ単独ないし併用で行われています。
認知行動療法は、グループで行う認知グループ療法(CBGT)が主流ですが、
国内では利用出来る医療機関は少なく、専門家の育成が急務です。
認知行動療法は薬物療法に比べて中止後の再発再燃が少ないのです。
薬物療法には、
@モノアミン酸化酵素阻害薬(MAOT)、       、
A高力値のベンゾジアゼピン系抗不安薬、     、
B可逆的なモノアミン酸化酵素阻害薬(RIMA)、   、
CSSRI (*1)、フルボキサミンが主に使われます、 、
Dβ遮断薬(βブロッカー→降圧薬)、        、
E選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、
などがありますが、SSRI が薬物療法の主役です。
薬物療法を始める前には社会不安障害についての教育、効果の出方や副作用について、
十分な説明が必要です。
a) SSRI であるフルボキサミンの使用法は、50mg/dayから始め、150mg/dayが有効投与量なので、患
者が耐える限りこの量まで増やし、3ヶ月を目安に効果を見ます。時に300mg/dayまで試みます。
SSRI の効果発現は遅く、プラセボとの有意差が認められるのは4週間以後で、少なくとも12週間
は経過を観察する必要があります。有効例では12週間以後も改善傾向があります。
SSRI は少なくとも一年以上の継続投与が必要です。SSRI の有効率は50〜60% であり、
症状が寛解に至るのは20〜30% です。
b) ベンゾジアゼピン系抗不安薬やβ遮断薬は即効性があるため、非全般型の症例や、SSRI の効果
が現れるまでの補助および予測される強い恐怖状況での頓用薬として用いる。
社会不安障害に対して、フルボキサミンの適応拡大が承認され、長年性格、内気の
問題として悩んでいた患者にとって大きな福音として期待されます。薬物療法の効果には
限界があり、認知行動療法の普及も急務ですが、既に、SSRI を用いた治療で寛解し、
過度の不安緊張から開放され、人生が変わったと喜ぶ例も希ではないのです。
(表1)  <SAD患者が恐れる社交場面>
(不安・恐怖、動悸、発汗、戦慄、こわばりなどが出現)
大勢の前で話をする
少人数の多少なじみのある人の前で話をする
自分よりも目上の人と対応する
会合やパーティーに出席する
知らない人と会ったり話しかけたりする
他人の前で食事を取る
他人の前で字を書く

(表2) <SAD患者の診断基準DSM-W(DSM-V)>  *子供の場合は除く
A.良く知らない人たちの前で他人の注視を浴びるかもしれない社会的状況、または行為をするという
  状況の1つまたはそれ以上に対する顕著で持続的な恐怖。その人は、自分が恥をかいたり恥ず
  かしい思いをしたりするような形での行動(または不安症状を呈したり)をすることを恐れる。
B.恐怖している社会状況への暴露によって、ほとんど必ず不安反応が誘発され、それは状況依存性、
  または状況誘発性のパニック発作の形をとることがある。
C.その人は、恐怖が過剰であること、または不合理であることを認識している
D.恐怖している社会状況または行為をする状況は回避されているか、またはそうでなければ、強い    不安または苦痛を伴い耐え忍ばれている。
E.恐怖している社会的状況または行為をする状況の回避、不安を伴う予期、または苦痛のために、そ
  の人の正常な毎日の生活習慣、職業上の(学業上の)機能、または社会活動または他者との関係
  を障害されており、またはその恐怖症があるために著しい苦痛を感じている。         
F.18才未満の人の場合、持続期間は少なくとも6ヶ月である。
G.その恐怖または回避は、物質(例: 乱用薬物、投薬)または一般身体疾患の直接的な生理学的作用  によるものではなく、他の精神疾患(例:広場恐怖を伴う、または伴わないパニック障害、分離不安   障害、身体醜形障害、広範囲発達障害、または分裂病質人格障害)ではうまく説明されない。
H.一般身体疾患または他の精神疾患が存在している場合、基準Aの恐怖はそれに関連がない(例 :恐  怖は、吃音症、パーキンソン病の振戦、または神経性食欲不振症 、または神経性大食症の異常  な食行動を示すことへの恐怖でもない)。
該当すれば特定せよ : 
全般性 : 恐怖が「ほとんどの社会的状況」に向けられている場合。
      (「回避性人格障害の診断の追加も考慮」すること)
複雑性悲嘆注意欠陥障害アスペルガ−症候群
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